1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/07/11(金) 07:56:38.61 ID:???0.net
美しいオランダを取り戻させる“醜い敗戦”
火事の場に居合わせた人間は、特別な力を発揮することがある。ブラジル人は、そのことを知っていた。
知っていたから、彼らは最強の敵と戦うために、自らの心に火を放った。国民のため。ネイマールのため。
ゆえに、立ち上がりのブラジルが見せた迫力は凄(すさ)まじいものがあった。
だが、普段は使わない領域にまで踏み込んだ猛攻は、ドイツの力をも引き出してしまった。火事場の馬鹿(ばか)力が、相手の馬鹿力まで呼び覚ましてしまったのである。
ブラジルにとってのドイツがそうだったように、オランダにとってのアルゼンチン、アルゼンチンにとってのオランダは、今大会で戦う最強の相手だった。だが、そんな相手を倒すために両国が取った手段は、ブラジルの決断とはかけ離れたものだった。
「走るな!」
かつて横浜フリューゲルスで指揮を執ったチャーリー・レシャックは、選手たちにそう言ったことがある
という。訝(いぶか)しがる日本人選手に、彼は逆に尋ねた。
「そんなに走ってばかりで、お前たちは方程式が解けるのか?」
レシャックは、バルセロナ時代にクライフの右腕と呼ばれた男である。彼の言葉は、クライフの哲学でもある。そして、クライフのサッカーとは、思考を伴わない無駄走りを否定し、11人全員が常に考えながらポジション取りを続けていくことから始まる。求められるのは「走り」ではなく「動き」。ボール保持者を一角とした三角形を連続させるための動き、なのである。
思い返してみれば、ハンス・オフトが日本代表の選手たちに口を酸っぱくして説いた基礎理解の一つに「トライアングル」があった。それは、彼がオランダ人であったことと無関係ではなかったはずだ。
だが、ファンハール監督率いるオランダに、特にこの日のオランダに、三角形を作ろうとする動きは皆無だった。彼らが動き出すのは自分たちがボールを持った時ではなく、高いポジションでボールを奪えそうになった時のみ。ポゼッションという概念を否定するどころか、嫌悪しているのではと勘繰りたくなるようなサッカーだった。
アルゼンチンの対応も寂しかった。虎口に入ろうとする意欲はまるでなく、後半に入るとオランダに負けないぐらい消極的なサッカーにシフト。前日の準決勝第1試合が「史上最も衝撃的な準決勝」だとしたら、これは「近年稀(まれ)に見る退屈な準決勝」だった。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/
つづく
火事の場に居合わせた人間は、特別な力を発揮することがある。ブラジル人は、そのことを知っていた。
知っていたから、彼らは最強の敵と戦うために、自らの心に火を放った。国民のため。ネイマールのため。
ゆえに、立ち上がりのブラジルが見せた迫力は凄(すさ)まじいものがあった。
だが、普段は使わない領域にまで踏み込んだ猛攻は、ドイツの力をも引き出してしまった。火事場の馬鹿(ばか)力が、相手の馬鹿力まで呼び覚ましてしまったのである。
ブラジルにとってのドイツがそうだったように、オランダにとってのアルゼンチン、アルゼンチンにとってのオランダは、今大会で戦う最強の相手だった。だが、そんな相手を倒すために両国が取った手段は、ブラジルの決断とはかけ離れたものだった。
「走るな!」
かつて横浜フリューゲルスで指揮を執ったチャーリー・レシャックは、選手たちにそう言ったことがある
という。訝(いぶか)しがる日本人選手に、彼は逆に尋ねた。
「そんなに走ってばかりで、お前たちは方程式が解けるのか?」
レシャックは、バルセロナ時代にクライフの右腕と呼ばれた男である。彼の言葉は、クライフの哲学でもある。そして、クライフのサッカーとは、思考を伴わない無駄走りを否定し、11人全員が常に考えながらポジション取りを続けていくことから始まる。求められるのは「走り」ではなく「動き」。ボール保持者を一角とした三角形を連続させるための動き、なのである。
思い返してみれば、ハンス・オフトが日本代表の選手たちに口を酸っぱくして説いた基礎理解の一つに「トライアングル」があった。それは、彼がオランダ人であったことと無関係ではなかったはずだ。
だが、ファンハール監督率いるオランダに、特にこの日のオランダに、三角形を作ろうとする動きは皆無だった。彼らが動き出すのは自分たちがボールを持った時ではなく、高いポジションでボールを奪えそうになった時のみ。ポゼッションという概念を否定するどころか、嫌悪しているのではと勘繰りたくなるようなサッカーだった。
アルゼンチンの対応も寂しかった。虎口に入ろうとする意欲はまるでなく、後半に入るとオランダに負けないぐらい消極的なサッカーにシフト。前日の準決勝第1試合が「史上最も衝撃的な準決勝」だとしたら、これは「近年稀(まれ)に見る退屈な準決勝」だった。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/
つづく
【いサッカーでの負けは、何も、残らない 金子達仁氏】の続きを読む