金子達仁

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/07/11(金) 07:56:38.61 ID:???0.net
    美しいオランダを取り戻させる“醜い敗戦”

     火事の場に居合わせた人間は、特別な力を発揮することがある。ブラジル人は、そのことを知っていた。
    知っていたから、彼らは最強の敵と戦うために、自らの心に火を放った。国民のため。ネイマールのため。
    ゆえに、立ち上がりのブラジルが見せた迫力は凄(すさ)まじいものがあった。

     だが、普段は使わない領域にまで踏み込んだ猛攻は、ドイツの力をも引き出してしまった。火事場の馬鹿(ばか)力が、相手の馬鹿力まで呼び覚ましてしまったのである。

     ブラジルにとってのドイツがそうだったように、オランダにとってのアルゼンチン、アルゼンチンにとってのオランダは、今大会で戦う最強の相手だった。だが、そんな相手を倒すために両国が取った手段は、ブラジルの決断とはかけ離れたものだった。

     「走るな!」

     かつて横浜フリューゲルスで指揮を執ったチャーリー・レシャックは、選手たちにそう言ったことがある
    という。訝(いぶか)しがる日本人選手に、彼は逆に尋ねた。

     「そんなに走ってばかりで、お前たちは方程式が解けるのか?」

     レシャックは、バルセロナ時代にクライフの右腕と呼ばれた男である。彼の言葉は、クライフの哲学でもある。そして、クライフのサッカーとは、思考を伴わない無駄走りを否定し、11人全員が常に考えながらポジション取りを続けていくことから始まる。求められるのは「走り」ではなく「動き」。ボール保持者を一角とした三角形を連続させるための動き、なのである。

     思い返してみれば、ハンス・オフトが日本代表の選手たちに口を酸っぱくして説いた基礎理解の一つに「トライアングル」があった。それは、彼がオランダ人であったことと無関係ではなかったはずだ。

     だが、ファンハール監督率いるオランダに、特にこの日のオランダに、三角形を作ろうとする動きは皆無だった。彼らが動き出すのは自分たちがボールを持った時ではなく、高いポジションでボールを奪えそうになった時のみ。ポゼッションという概念を否定するどころか、嫌悪しているのではと勘繰りたくなるようなサッカーだった。

     アルゼンチンの対応も寂しかった。虎口に入ろうとする意欲はまるでなく、後半に入るとオランダに負けないぐらい消極的なサッカーにシフト。前日の準決勝第1試合が「史上最も衝撃的な準決勝」だとしたら、これは「近年稀(まれ)に見る退屈な準決勝」だった。

    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/

    つづく

    【いサッカーでの負けは、何も、残らない 金子達仁氏】の続きを読む

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/07/10(木) 12:09:11.71 ID:???0.net
    【コラム】金子達仁 2014年
    世界からの憧れだった王国は、死んだ
    歴史的大敗を喫したブラジル代表

     言葉が、ない。

     王国と言えども、敗れることはある。けれども、過去に彼らが喫してきた敗北と、今回の惨劇とは意味合いがまるで違う。64年前のマラカナン。40年前のヴェストファーレン。32年前のサリア。どれも、ブラジル人にとっては痛恨の極みではあったはずだが、それでも、失わずに済んだものもあった。

     世界からの、憧れ。

     ブラジル人にとってはもちろんのこと、サッカーを愛するすべての人間にとって、カナリア色は特別な意味を持ってい……た。彼らの勝利はいつも必然で、彼らの敗北はいつも不運だった。敗れてもなお、世界中にファンを生み続けてきたのがこれまでのブラジルだった。

     1―7。

     これが人生で初めて見るW杯だった世界中の少年たちは、ブラジルを無敵の王国ではなく、哀れな存在として記憶する。ブラジル・サッカー界が一世紀かけて作り上げてきたイメージは、一夜にして壊滅した。今大会以前のW杯を知る者とそうでない者との間には、おそらくは埋めようのないイメージのギャップが生まれることになる。

     もしわたしがブラジル人だったとしたら……スニガに感謝するかもしれない。悪質極まりないタックルでネイマールの背骨をへし折ったコロンビア人。ブラジル人は激怒し、スニガの許(もと)には殺人予告も届いたというが、もしネイマールが健在だったとしたら、ブラジル人にとって「ほとんど何も救いのない」今回の敗北は、「完全に救いのない」敗北になっていた。

    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/

    つづく

    3: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/07/10(木) 12:10:03.68 ID:???0.net
    >>1のつづき
     ネイマールがいても、どうにもならないぐらいこの日のドイツは強かった。それでも、ネイマールがいたらと考えることで、ほんのわずかであっても救われるブラジル人はいよう。

     この原稿を書いている時点で、W杯はあと3試合残っている。だが、これからどんなドラマが起ころうとも、14年7月8日、ベロオリゾンテでの衝撃を超えることがあるとは思えない。いると信じていた神を否定された。天が動いていると信じていたら地面が動いているのだと教えられた。この1―7は、それぐらい歴史的な事件である。

     王国は、死んだ。死んでしまった。

     大会前から、わたしは優勝候補の筆頭としてドイツをあげてきた。準決勝を前にしても、おそらく勝つのはドイツだろうとも思ってきた。だが、無慈悲とさえ言える彼らの勝ちっぷりを見せられて、なんとも言えない苦さが胸いっぱいに広がりつつある。

     超えてはいけない一線、それを超えた瞬間を目の当たりにしてしまったような。

     試合が終わってもうすぐ半日が経(た)つ。わたしはまだ、衝撃から立ち直れずにいる。
    (金子達仁=スポーツライター)

    【金子達仁氏「大会前から私は優勝候補の筆頭としてドイツをあげてきた」】の続きを読む

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    1: プーアル ★@\(^o^)/ 2014/07/07(月) 01:46:29.47 ID:???0.net
    チェルシーの象徴が行く。レアルで、ミランで中核を担った男も海を渡る。
    日本ではベッカムが加入した時ぐらいしか話題にならなかった米国メジャーリーグサッカー(MLS)が、いよいよ活況を呈してきている。

     発足当時、リーグを運営する人たちが神経質なまでにこだわったのは、「コスモスの二の舞いだけはしない」ということだったと聞く。
    70年代に隆盛を迎えた北米サッカーリーグ(NASL)は、現在のMLSをはるかに超える注目を集めたが
    ニューヨーク・コスモスにスターが集中したことでバランスを崩し、消滅していった。

     コスモスの失敗を繰り返さないために、MLSはチームの総年俸額にリミットを設けた。
    いわゆるサラリーキャップ制度である。とかく自由競争を重んじるこの国にあって、スポーツだけはなぜか
    共産主義的な匂いもするのが面白いところだが、ともあれ、このルールの甲斐(かい)あってかMLSは爆発的な人気を博することこそなかったものの、着実に市場を拡大していった。

     そこにきて、今回の代表チームの感動的な戦いぶりである。信じがたいことだが、メジャーリーグの選手が米国代表のユニホームを着て試合前の練習をする、ということまであったのだという。4大スポーツの牙城は当分健在だろうが5番目のスポーツとしてのサッカーが一気にその地位を高めたのは間違いない。

     それにしても、サラリーキャップを導入していながら、なぜ導入していない日本にも来てくれないようなスターが米国には渡るのか。まず大きいのは英語圏である、ということだろうが、もう一つ忘れてはならないのはギャラの問題である。
    総年俸に制限をかける一方で、MLSは各クラブに3人までの「指定選手」という存在を認めているのだ。

     指定選手とは、つまり例外のこと。彼らの年俸は、どれほどの金額になろうとも約4000万円と計算される。
    ちなみに、これは指定外の選手にとってのリミットとなる金額でもある。

     今回のW杯で活躍したデンプシー、ブラッドリーといった選手は、指定選手として7億円近い金額を手にしている。
    なるほど、これならば世界のスターが海を渡るのも理解はできる。

     こうなると、日本はいよいよ苦しい。東南アジアの突き上げがある上、世界最大の経済大国までサッカー界に参入してきた。
    世界のスターは来ない。日本のスターは流出していく。

    一方で、代表監督だけは平気で2億円もの額を手にすることができる歪(いびつ)さ――。

     どんな時代になろうとも、代表チームの力の源は国内リーグである。このままでは、Jリーグは確実に衰退の一途をたどる。
    いままでタブーとしていたこと、たとえば企業名の解禁なども含めて、あらゆる可能性を考えなければいけない時代が訪れようとしている。(金子達仁=スポーツライター)

    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/kiji/K20140705008503060.html

    【MLSは失敗から学んだ。Jはどうか(金子達仁)】の続きを読む

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/07/06(日) 17:53:36.48 ID:???0.net
     すっかり忘れていた。

     W杯では先制点が重い。W杯ではセットプレーが重要である。W杯で逆転劇はそうそう起こるものではない。そして――

     W杯は退屈な試合が少なくない。

     ドイツ対フランス。終盤にフランスが見せた猛攻は迫力があった。退屈という言葉で片づけてしまうのはいささか乱暴だし、4年前であれば好ゲームの部類に入ったかもしれない。

     ただ、驚異的なペースで名勝負や逆転劇を量産してきた今大会に見慣れた目からすると、なんとも盛り上がりに欠けた凡戦に感じられてしまった。

     なぜ今大会はこんなにもドラマチックな試合が続出しているのか。なぜこんなにもゴールが多いのか。気温?湿気?もちろん関係はあるだろう。だが、わたしが一番重要だと思っているのは、ブラジルの観客が作り出す雰囲気である。湿度や温度だけで劇的な試合が増えるというならば、94年や02年は名勝負のオンパレードになっていなければおかしいからだ。

     世界で最も攻撃的なサッカーを愛し、世界で最も代表チームの戦いぶりに内容を求める国。そんな国のファンが母国代表以外でひいきとするのは、勇敢に戦おうとするチームだった。勇敢に戦えば、スタジアムをホームにすることも可能だった。一度アウェーになっても、負けじと勇敢に戦えば、自分たちがホームの立場となることもありえた。

     だから、ドラマが続出した。

     だが、大会は準々決勝に入った。ドイツにせよフランスにせよ、勝った方がコロンビアを倒すであろうブラジルと当たる――観客の中にそんな現実がチラついたのか。この日のドイツは、フランスは、どちらもホームではなく、アウェーでもなかった。試合は淡々と進み、淡々と終わった――今大会の名勝負に比べれば。

     ブラジル対コロンビアも悪い試合ではなかった。フランス同様、追うコロンビアがブラジル・ゴールに迫るさまは相当な迫力があった。ただ、惜しむらくは目を覚ますのが遅すぎた。ここまでファルカオ不在をまるで感じさせずに戦ってきたチームは、突如としてエースがいないことを思い出してしまったようだった。

     考えてみれば、コロンビアはここまでの4試合、大挙して乗り込んできたサポーターの声援にも支えられてきた。彼らにとって、今回のW杯は準ホームだったのだ。

     しかし、ブラジルと当たるとなれば、そのアドバンテージは完全に失われる。そして、アドバンテージを失った彼らから、これまでの凄みは失われていた。

    【コラム】金子達仁 2014年 必見!圧倒的な声援VS圧倒的な強さ
    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/

    >>2につづく

    【金子達仁 必見!圧倒的な声援VS圧倒的な強さ】の続きを読む

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/07/02(水) 14:22:47.09 ID:???0.net
    【コラム】金子達仁 2014年

    世界が、地球が勇敢な狐に魂を震わせた
    優勝候補ドイツに対して、勇敢に戦ったアルジェリアに最大限の賛辞を送りたい

     気がつけば、頬が濡れていた。知らず知らずのうちに、涙が溢(あふ)れ出ていた。

     こんな試合が、過去に一度だけあった。82年イタリア―ブラジル。いまなお世界中のサッカーファンが「W杯史上最高の名勝負」と語り継ぐ伝説の一戦。だが、この日より先はこの試合について語られることが、少し減るかもしれない。
    14年6月30日、新たな伝説の死闘が生まれた。

     2週間前のアルジェリアは、相手の強いところばかりを警戒する典型的なアウトサイダーだった。運良くロングボール1発から先制したものの、いとも簡単に逆転負け。攻撃パターンの貧困さは、日本中を失望させた我が代表と比較しても気の毒なほどだった。

     だが、韓国を粉砕し、ロシアの攻めをしのぎきった彼らは、違うチームになっていた。ドイツは、ベルギーよりも強い。
    にもかかわらず、“砂漠の狐(きつね)”たちは相手の強さではなく弱さに着目した。

     スピードという弱点に。

     ドイツに油断があったわけではない。レーブ監督がCBにボアテングを起用したのは、相手がスピード勝負を仕掛けてきた際の保険でもあったはずだ。だが、スキを見せたわけではない優勝候補を、前半、細く鋭い狐の牙が幾度となく襲った。

     ドイツのゴールを守っていたのが並のGKであれば、試合は「世紀の番狂わせ」と呼ばれた32年前の再現になっていてもおかしくなかった。しかし、ノイアーは並のGKではなく、なおかつ、この日の彼は最高級のリベロでもあった。
    狡猾(こうかつ)に急所をつくアルジェリアの攻めは、ことごとくペナルティーエリアを飛び出したノイアーにその芽を摘み取られた。

     なかば“片道特攻”のようですらあったアルジェリアの攻撃をしのぐと、そこからはドイツの時間である。前半終了間際には早くもノックアウト寸前にまで巻き返し、後半に入るとほぼワンサイドで試合を支配した。

     ところが、フランスで生まれ、フランスで育ったアルジェリアの選手たちは、宗主国の代表チームでさえ見せたことがない驚くべき粘りで抵抗した。フィールドプレーヤーが防ぎきれなかったピンチには、GKムボリが最後の砦(とりで)となって立ちふさがった。

     そして迎えた延長戦。狐たちの心を叩きつぶさんとするシュールレの一撃。ドイツ人にとって、82年W杯の、そして87年チャンピオンズ杯決勝でバイエルンがポルトのアルジェリア人、ラバー・マジェールに食らったヒールゴールに対する、壮大なリベンジだった。

     だが、それでもアルジェリアは死ななかった。絶望的な2点目をたたき込まれても、死ななかった。ボロボロになった最後の牙で、アディショナルタイム、彼らは見る者の魂を震わせる一撃を見舞い、ついに息絶えた。

     圧倒的な強さを誇る百獣の王と、勇敢な狐が繰り広げた120分超の名勝負。世界は、いや、地球は、この日の戦いを長く語り継いでいくことになろう。(金子達仁=スポーツライター) 【ドイツ―アルジェリア】

    [ 2014年7月2日
    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/

    【金子達仁「気づけば涙があふれ出ていた。地球はこの戦いを長く語り継いでいくことになる」】の続きを読む

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/07/02(水) 09:55:31.64 ID:???0.net
    メキシコを世界一へ前進させる深い傷
    オランダ戦に敗れ、スタンドで涙するメキシコ代表サポーター

     なでしこたちが米国の前に屈した、ロンドン五輪女子サッカー決勝の日のことだった。試合後、
    打ちひしがれて市内に向かう地下鉄に乗っていると、オランダ人の老夫婦に話しかけられた。

     「元気を出しなさい。わたしたちが何度、決勝で負けたと思っているんだい?」

     期待が大きければ大きいほど、失望の傷は深い。74年大会の決勝で敗れたクライフは、二度と
    同じ痛みを味わいたくないがゆえ、4年後のW杯出場を辞退したと言われている。彼に言わせると
    W杯決勝で敗れることは生涯最悪の経験であり、オランダ人は過去に3度、その最悪の経験を経て
    きている。

     メキシコ人も、もちろんたくさんの傷を負ってきている。W杯における連敗記録は「9」。記録を
    保持しているのは彼らの愛する“エル・エキッポ・トリコロール(3色のチーム)”だ。

     だが、彼らの受けてきた傷は、オランダ人ほどに深いものではなかった、ということなのだろうか。
    決勝で3度敗れるほどの痛みは、経験してこなかった。だからなのか。味わってきた挫折の濃淡が、
    土壇場で明暗を分けたのか。わたしには、終了直前までリードしていたメキシコが敗れ、敗色濃厚
    だったオランダが勝ち上がった理由を、フォルタレザのピッチの上から見つけることができない。
    また、誰かが見つけたとしても、完全に納得することは難しいだろう。

     試合は、完全にメキシコのものだった。ブラジルと互角に渡り合ったことで、彼らはまた一歩階段を
    上っていた。自分たちのサッカーに対する信念は、前回王者スペインを木っ端みじんに粉砕してきた
    オランダをも上回っていた。今大会ここまで得点のなかったジョバニ・ドスサントスが先制点を決めた
    時点で、わたしは、ほぼ試合は終わったと思った。

     おそらく、オランダの勝因としてあげられるのはリードを奪われてからのシステム変更だろう。確かに
    4バックに変更してからのオランダには、攻めの迫力が出てきていた。しかし、メキシコに圧倒された
    5バックのシステムも、ファンハール監督が選んだものである。リードされたら外から放り込んでこぼれ
    球を狙うという作戦に、わたしは少しも美や英知を感じなかった。

     まして、メキシコのゴールには、GKオチョアが魔術をかけていた。マイアミでの川口能活がそう
    だったように、ああいうモードに突入したGKは、まずゴールを許すことはない。

     だから、なぜメキシコが敗れ、オランダが勝ったのか。わたしは、その答えを歴史に見いだすしかない。
    メキシコには、まだ傷が足りなかった。しかし、悪夢としかいいようのないこの逆転負けは、また一歩、
    彼らを世界の頂点に近づけることにもなるはずだ。(金子達仁=スポーツライター)

    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/06/29(日) 07:23:09.32 ID:???0.net
    【コラム】金子達仁 2014年
    審判批判増の最大の理由は映像技術の進化

     開幕戦から2週間以上経(た)つというのに、いまだに西村主審についてのコメントを求める電話がかかってくる。あれはミスジャッジですか?後日クロアチア人に脅迫されたそうですがそれについては?

     フレッジの転倒にPKを与えた西村主審の判断に、納得がいかないクロアチア人の気持ちはよくわかる。あれは、アウェーチームの側からすると、典型的な“ホームタウン・ディシジョン”だった。

     ただ、観衆の圧倒的な声援に後押しされるホームチームに対し、少しばかり有利な笛が吹かれるのはサッカーの常識でもある。にもかかわらず、あの判断が長く取り沙汰されるのにはいくつかの理由があるように思う。

     まず、試合を追うカメラの画質が向上し、なおかつ台数が増えたことで、従来であれば見逃されていた試合のディテールが徹底的に暴かれるようになった。解説者たちが「これは微妙なジャッジですねえ」とお茶を濁したくなる場面が、黒白はっきりとわかる形でリピートされる。自分の目しか頼るものがない審判に対し、視聴者たちは圧倒的に有利な後出しジャンケンができるのである。

     なぜフレッジの転倒は問題視されたのか。ありとあらゆる角度から高画質のスローで再生され、限りなくシミュレーションに近いということを皆が知ったからだった。なにしろ、今大会は以前であれば絶対に発覚しなかったであろう「密(ひそ)かな噛(か)み付(つ)き」でさえすぐに露呈してしまう大会なのである。

     英国の高級紙「ガーディアン」は今大会の審判のレベルが低いと批判しているようだが、わたしはそうは思わない。テクノロジーの進化が、サッカーに於(お)けるグレーゾーンに光を当てたがゆえ、審判のミスが見えやすくなっただけである。

     さらに、西村主審が日本人だったことも、騒ぎに拍車をかけた可能性はある。シュートを外したことのないFWがいないように、絶対に判断を誤らない審判もいない。ただ、たとえば英国人の審判がミスを犯したとしても、批判する側が国籍を意識することはまずないが、西村主審の場合、史上初めてW杯開幕戦を裁く日本人だということがニュースになっていた。日本人?大丈夫なのか?と懐疑的に見ていた人たちにとって、あのジャッジは批判するための格好の材料だった。

     間違いなく言えるのは、審判という仕事の難易度と罵声を浴びる可能性は、以前よりも確実に上がった、ということである。日本代表は敗れてもあたたかく迎えられたが、審判にそうした慰めが与えられることはまずない。なんと因果な、そして崇高な職務であることか。 (金子達仁=スポーツライター)

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/06/27(金) 07:59:35.89 ID:???0.net
    【コラム】金子達仁 2014年
    警戒されたがゆえのアジア勢“惨敗”

     あまりジェネレーションギャップは感じないタチなのだが、今回ばかりは痛感した。

     日本が負けた。もちろんショックは受けている。ただ、日本のいないW杯が当たり前の時代を過ごしてきた人間としては、宴が終わってしまったような顔をしている世代を見ると、気の毒でもありうらやましくもある。W杯は、むしろこれから。ただし、日本代表を強くしていくのは、彼らのようなメンタリティーだ。

     さて、この日はイランがボスニア・ヘルツェゴビナに完敗し、今大会におけるアジア勢の成績は3分け8敗となった。日本代表に向けられるのと同じように、アジアのレベルを嘆く声が高まるのは確実だ。

     もちろん、欧州や南米に比べてアジアのレベルが一段落ちるのは事実である。だが、今大会で成績が伸び悩んだのは、実力的な問題というよりも、対戦相手の意識に原因があるのではという気がしている。

     これは、アフリカがまず足を踏み入れた道だった。82年大会でアルジェリアが西ドイツを倒し、90年大会ではカメルーンがアルゼンチンを沈めた。あの頃、まことしやかに言われたのは「21世紀はアフリカの時代」ということだった。

     だが、大方の予想に反し、アフリカ勢の成績は伸び悩んだ。欧州でプレーする選手の数は激増し、個々のレベルと経験値は飛躍的に上がったにもかかわらず、いまだW杯では4強に入れずにいる。

     82年大会、ベルミやマジェールの名前を知っている西ドイツ人はいなかった。90年大会、オマンビークの怪物的な身体能力を警戒しているアルゼンチン人もいなかった。いまは違う。ドログバを知らないドイツ人はいないし、エトオを知らないアルゼンチン人もいない。

     同じ道を、アジアも歩み始めつつある。

     ギリシャ人は本田を知っていた。オランダ人はカーヒルを知っていた。そして、ボスニア人はゴーチャネジハドを知っていた。アフリカ勢ですらなし遂げたことのないW杯4強を、アジア勢はなし遂げている。4年前、アフリカ勢はガーナしか1次リーグを突破できなかったが、アジア勢は日本と韓国の2チームがベスト16に進出した。

     警戒されるのは当然である。

     今大会、日本は惨敗した。おそらくは韓国も散るだろうから、アジア勢は全滅ということになる。
    もちろん、苦い現実は直視しなければならないが、必要以上に自虐的になるのは無意味である。

     4年前はニュージーランドがそうだった。今回はコスタリカが当てはまる。ノーマークとは、なかなかおいしい立場なのだが、アジアは、すでにそこを抜け出したのだ。 (スポーツライター)

    [ 2014年6月27日 ]
    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/

    【金子氏「アジアは警戒されていた」「自虐的になるのは無意味」】の続きを読む

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/06/25(水) 08:09:41.09 ID:???0.net
    【コラム】金子達仁 2014年
    今後の日本が学ぶべきはメキシコの知恵

     西村主審に対する日本国内の反応を見ていると、STAP細胞をめぐる一連の騒動がダブってくる。上手(うま)くいっている時は「日本の誇り」。雲行きが怪しくなってくると「個人の問題」。悪いのはあの人個人であって、日本人が悪いわけじゃない?いやいや、 ガッカリさせられる。

     かつて、スペインの名審判と言われたディアス・ベガ氏が言っていたことがある。

     「おまえのせいで負けた、と言われることがよくあるが、ならば、言われたのと同じ数だけ、わたしのおかげで勝ったチームもあるはずだ。だが、わたしはまだ一度も、感謝されたことはない」

     確かに、ブラジル戦でのクロアチアは不運だった。だが、ちゃんとその見返りはあった。
    この日、彼らは自陣ペナルティーエリア内で犯した明らかな反則を見逃してもらっている。
    まだどちらにも得点は生まれていなかっただけに、この判定は極めて大きな意味を持つ可能性があった。

     ところが、今大会に入ってクロアチア以上に審判に泣かされてきたメキシコは、またしても見舞われたミスジャッジにもまるで気落ちしたところを見せなかった。それどころか、ブラジルですら勝つためには審判の力を借りる必要があった強敵に、自力で3発をブチこんでの快勝である。

     中でも感心させられたのはCKの攻め方だった。彼らは、徹底してニアサイドに緩いボールを入れ続けた。ヨハン・クライフが著書「サッカー論」(二見書房刊)で述べているところによれば、これは高さのないチームにとってベストの攻め方である。緩いボールならば、クリアもそう遠くまでは飛ばない。だから、高さで負けても、こぼれ球を狙うことができる、というわけだ。

     バルサで長くプレーした選手が2人いるメキシコは、このやり方を熟知していた。そして、散々相手にニアサイドを意識させておいて、一度だけファーサイドでの勝負に出た。頭で合わせたのは元バルサのCBマルケスだった。

     メキシコは、日本同様に高さのある国ではない。それでも、高さでも点を取るべく知恵の限りを尽くしている。このあたりの姿勢は、今後の日本も大いに参考にしていく必要がある。

     さて、W杯は毎試合がその国にとっての決戦だが、日本にとって、今大会最大の決戦がやってきた。
    コロンビアは確かに強いが、オランダやアルゼンチンほどではない。そして、日本は彼らを苦しめぬいたオーストラリアやイランより弱いわけでもない。

     オーストラリアのカーヒルは、子供たちの未来のために戦った、と語った。コロンビア戦では、誰かのために戦う日本代表が見たい。(金子達仁=スポーツライター)

    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/

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    1: 動物園φ ★@\(^o^)/ 2014/06/22(日) 18:24:08.47 ID:???0.net
    侍よ思い出せ、3・11からの日本の姿を

    <日本・ギリシャ>先発を外れた香川(左から4人目)。ベンチで肩を組む
    Photo By スポニチ

     これが初戦であれば、結果、内容に対する日本人の受け止め方はまったく違うものになっていた。

     過去のW杯で、日本がここまで欧州のチームを圧倒したことはなかった。この場合、主語を「日本」から「アジア勢」に変えてもかまわない。自国が出場していないコンフェデ杯など見向きもしなかった大半の国々は、アジアのチームがここまで元欧州王者を圧倒したことに驚愕(きょうがく)したに違いない。

     だが、日本人は日本のことを知っていた。そして、これはW杯の第2戦。黒星スタートで迎えた、勝たなければいけない一戦だった。だから、腹が立つ。采配への疑問をぶつけたくなる。得点が奪えなかったことを嘆きたくもなる。

     実を言えば、わたしの中にも不満は渦巻いている。なぜ交代枠を使い切らなかったのか。なぜ持ち味を発揮していた大迫を下げたのか。相手が日本のドリブルにあれほど手を焼いているのを見ながら、なぜ斎藤学を投入しなかったのか――挙げていったらキリがない。

     それでも、思うのだ。

     勝てた試合だったし、勝たなければならない試合でもあった。だが、これは過去のW杯も含めて、日本が最も相手を押し込んだ試合でもあった。勝ちきれなかったのは、できなかったこと、足らなかったことがあったからなのだろうが、同時に、できたこと、足りていたこともあった試合だった。
    ギリシャよりは、はるかにあった試合だった。

     だから、いま一番やってはいけないのは、できなかったことを嘆くあまり、できていたことまでも否定してしまうことだ、と。

    http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2014/kiji/K20140621008417520.html

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